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環境心理学で考える

環境心理学で考える 第22回

2011年12月16日

犯罪を起こす環境と犯罪を防げない環境

日本大学文理学部教授 羽生 和紀

 前回(第21回:犯罪への意識とバイアス)でも少し述べたが、犯罪者と被害者が出会うことは犯罪発生の必要条件であるが、第16回(街には他人がいないほうがいいのか?いたほうがいいのか?:ゲーテッドコミュニティとニューアーバニズム)で書いたように、それに加え、犯罪を抑止できない環境が揃うことが、犯罪発生の十分条件と主張するのが、マーカス・フェルソンのルーティンアクティビティ理論である。

 このルーティンアクティビティ理論からは、犯罪が多発する場所を3つの類型に分類することが可能であるとされる。それは、1)犯罪を生み出す場所、2)犯罪者を惹きつける場所、そして3)犯罪を抑止できない場所である。

 犯罪を生み出す場所とは、潜在的な犯罪者と潜在的な被害者が集まってしまうために、結果として犯罪が起こる可能性が高まる場所のことである。たとえば、繁華街での暴行がその例であり、人が多く集まるために喧嘩や諍いが多く発生することになる。犯罪者を惹きつける場所とは、潜在的な被害者(被害者になりうる人のこと)が多く存在することから、犯罪者を惹きつけてしまう場所で、たとえば、混んだ車両に痴漢が多く出没することがこの例である。犯罪を抑止できない場所とは、おもに人が少なく、第三者による監視や被害者への援助が期待できない場所のことである。

 この3種類の犯罪発生場所を比較してみると、犯罪を生み出す場所と犯罪者を惹きつける場所は、そこにいる潜在的な被害者の数が多いため、犯罪の総数も多いことがわかる。しかし、一般的に、犯罪を抑止できない場所に対するほうが、人々の犯罪に対する不安が大きい。結果として、そうした場所には人は近づかないために、犯罪発生数は少ない傾向がある。

 犯罪を抑止できない場所においては、発生数は少なくとも、そこを訪れざるをえない人の被害確率は高い。逆に、犯罪発生の総数が多い、犯罪を生み出す場所と犯罪者を惹きつける場所に対する不安は低いことが多いため、警戒心は低くなる。このように、同じように犯罪に対しての問題がある場所であっても、犯罪発生のメカニズムとそこに対する人々の意識は大きく異なっていることがわかる。

 したがって、必要な対策もそれぞれの種類に応じたものが必要である。それは環境デザインによる防犯にも当てはまることであり、ある場所で有効な対策が、自動的に別の場所でも有効とはならないことを意味している。また、犯罪を抑止できない場所において、人が少ないことで、ますます不安を感じ、さらに少なくなるという心理メカニズムによる悪循環も考えられる。このエッセイで繰り返し述べてきたことであるが、防犯設計を含む環境デザインは、物理的な効果を考慮するだけではなく、その心理的な効果のメカニズムについても配慮が必要である。


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