研究員コラム
研究員コラム 第12回
2011年3月 4日
研究員の芥子です。
この研究員という肩書きには未だに恥ずかしいような、くすぐったいような感じがあり、しっくりきませんが、行動観察研究所が設立されて1年半、エルネットが「行動観察」ビジネスを初めて、早いもので、もう6年目です。
サービスサイエンスという分野における「行動観察」が話題になりますが、私は常にマーケティングリサーチの一手法として「行動観察」を意識し、接してきたように思います。
約7年前、大阪ガスの酉島研究所で、松波氏(現:大阪ガス行動観察研究所長)から、「行動観察」という手法と、従来のリサーチを比較し有効性を検証したいと相談を持ちかけられた時、「いまどき、観察?」・・と正直違和感を感じたのが私と行動観察との出会いです。その頃の私にとっては、「観察」はアンケートやインタビューよりも“古いリサーチ手法”という認識だったのです。
その後、松波氏と共に、いろいろな観察のお手伝いをしていくうちに、「観察」自体は昔からある手法であっても、松波氏の提唱する「行動観察」は、今まで私の接することのなかった学問的な裏づけや理論があり、私の中で、“古い手法”という感覚から“新しい手法”へと上書きされていきました。
また、「事実」を起点として問題点や課題を導き出し、改善、開発に結び付けて行くという点では、従来のリサーチと原点は同じであり、決して相対するものではなく、より深みを増すことができる一手法であるという思いに至りました。さらに、観察で得られる「事実」をクライアントに報告すると、「見えてなかった」ことに驚嘆し、新たな発見をしていく姿を目の当たりにするにつれて、この「行動観察」という手法の可能性を感じました。
実際にビジネス化に着手して、はじめて手がけた仕事は、「店頭観察」で、店頭にカメラを備え付け、その売り場に訪れる人たちの行動を映像を見て、逐一分析していくという、非常に地味な仕事でした。でも、いろいろなフィールドがある中で、私が一番好きなのはこの「店頭観察」です。
棚前に来てから、買うものを決めるまで、人間は本当にいろいろな行動をしています。
同じ商品でも人によって見方が違う、商品の持ち方が違う、考える時間が違う。
また、その一方で、同じカテゴリー棚に訪れる何十人もの行動を観察していると、そのカテゴリーならではの購買行動が見えてくる。今までのリサーチでは決して見出すことができなかった「事実」が映像にしっかり映りこんでいます。
これには、純粋に感動しました。
購買行動の分析というと、それまではグループインタビューなどで「お店で商品を選ぶとき、どんな風に選びますか?」と主婦の人たちに問い、そこで得た情報をもとにいろいろな施策の提案をしてきたわけですが、それだけでは足りなかった。見えていないことがあった、という発見。
例えば、「購入する時は必ず裏面やパッケージ情報をしっかり読んで購入します」という情報はグループインタビューではわかります。ただ、「どんな風にして」「どこの情報を」「どれくらいの時間をかけて」読んでいるのかは実際の購入場面を見ないとわかりません。
棚から手にとって見る、商品を棚の中でクルクル回して見る、商品には手を触れず、じっと棚の前に立って見る、などその商品の特徴やカテゴリーによっても違います。それによって、必要とする情報の提供の仕方が変わってきます。
今までのように、顧客が意識する顕在的なニーズだけを捉えて、商品企画やプロモーション企画を立案するだけでは、ほんとうに顧客のニーズを満たすことにはならない。特に店頭でのマーケティングはターゲットの現場での行動を踏まえた上で、様々な施策を講じることで、手にとって
もらえる、検討してもらえる機会を増やせると思います。
私にとっての「行動観察」はまだ発展途上ですが、従来からのリサーチ手法に深さと価値を与えるひとつの手法として、これからも探求していきたいと思う今日この頃です。
大阪ガス行動観察研究所 研究員 芥子 玲子











