研究員コラム
研究員コラム 第6回
2010年8月27日
「DS」が、「プレステ」が、あるいは、「旅行券」も入ってますよと、大きな呼び込みの声。
ふと目を向けると、畳2畳ほどのスペースの展示台に、大きさが様々、包装紙の色も様々な箱が、おそらく100個以上も、積み重なっている。
その箱を、その前にたむろした人たちが、これは違うだの、もしかしたらだの口にしながらためつすがめつ、次から次に手に取り、両手でガチャガチャと振っている・・・。
皆さんは、こんな光景を目にしたことはありませんか?
こんにちは。大阪ガス行動観察研究所 大塚と申します。
名前は、なんていうのかは分からないのですが、この新手の「くじ」(1回300円也)は、企まずしてかもしれませんが、心理学的観点から見て、実によくできているなと・・・。
―「とにかく手にとって振るだけ振ってみてください!」
相手が取りやすいボールを投げてまず取らせてしまう、つまり決定させてしまった後で、あとからよい条件を取り除いたり、悪い条件を付け加えたりする・・・。そう、ご存知の方が多いかもしれませんが、最初の承諾が人間の心を拘束してしまう心理を応用した説得の方法である「ローボールテクニック」の活用ですよね。案の定、手に持って振ってしまった人は例外なく、お金を払っていました。(いわゆる「大阪のおばちゃん」には、このテクニックはもしかしたら通用しないのかもしれませんが。)
―自ら「選ぶ」機会を提供
人は、結果が完全に偶然に左右される事象であっても、自分の能力によって結果を左右させることができると思ってしまいがちだといわれています。(ランガー「統制の幻想(illusion of control)」)
「ロト6」なんて、その心理状況をうまく捉まえた商品ですが、シャカシャカやらせて、選ばせるなんてこの仕掛けも、また、いいところをついているなと感心した次第。
振ってみて箱の中味をズバリ当てるなんて至難の業。もしかしたら、「DS」とか「プレイステーション」なら分かるはずなんていう方はいらっしゃるかもしれませんが、そのままの「カタチ」で入っているはずがないでしょうし、ましてや、「旅行券」なんて、分かろうはずがないとは思うのですが、「私なら分かる」と思わせてしまう演出は見事ですね。
―シャカシャカが人を呼ぶ
道を歩いているとき、空を見上げている人が何人かいたら、皆さんならどうしますか?多くの方は、つい見上げたくなるのではないでしょうか。山口先生の第2回コラムでもありましたが、人は周囲の人たちの行動に影響されずにはいられません。「シャカシャカくじ」では、箱を振りはじめた人は、あれでもない、これでもないと箱を手に取ることになることから、いきおい滞留時間が長くなっていました。これが、展示台の前にはだれかしらいるといった状況を演出する効果をもたらしていたのです。そうすると通りすがる人たちは「なにか面白いことをやっているらしい」「ここには何かあるらしい」と推測し、立ち止まり始めます。
立ち止まった人たちが目にするのは、他の人たちが「シャカシャカ」している光景です。人は、特に正しい行動が自分では判断できないような状況では、周囲の人たちの行動を正しいものと考え、自分がどのように振舞ったらよいかを決める傾向があります(社会的証明の原理)。「シャカシャカ振る人たち」は立ち止まったばかりの人たちに対して、「ここではシャカシャカ振るんですよ」という社会的証明となり、「とりあえず振るだけ振ってみてください」というローボールと相まって、トライを促す仕掛けとなります。さらには、そこで生まれた賑わい自体がまた人の関心を呼び、より多くの集客をもたらす装置として機能していたのです・・・。
以上、他にも色々と発見がありの「シャカシャカ」観察の小一時間でしたが、去り際にいいものを見せて貰ったお礼として、300円也を払って、自らも「シャカシャカ」にトライしてみました。
「統制の幻想」に囚われ、狙いは、液晶TV。引き換えカードが入っているということで、「シャカシャカシャカシャカ」・・・。
うーん、やられてる・・・。
大阪ガス行動観察研究所 大塚俊治
- « 研究員コラム 第5回
- 研究員コラム 第7回 »











