研究員コラム
研究員コラム 第4回
2010年3月31日
行動観察におけるラポール(*1)についてあれこれ
こんにちは。事務局の石川と申します。
研究所の数少ない事務方として、広報関係などを主に担当しております。
「研究員」として行動観察調査の「分析」に携わる事は無いのですが、「観察員」としての教育は受けており、観察調査の場数はそこそこ踏んでおります。
という事で、たまには毛色の違った、「観察員コラム」をお届けいたします。
今回はそんな観察の現場からのお話。
おかげさまで様々な所から調査依頼をいただきます。
もちろん観察調査の内容、現場も様々。
私が参加した調査をざっと思い返してみても、機械の作業現場、セールスパーソンの同行調査、交通機関の人の動線調査、飲食店の厨房、同じく飲食店の接客調査等々。
色々行っております。
多種多様な業種職種の現場に赴き、時には定位置でじっと観察し、時には特定の方の腰巾着のごとくくっついてまわります。
そこで私が強く意識しているのが対象者さんとの人間関係です。
定点観察の場合はまだマシなのですが、特定の対象者さんに一日張り付く場合、人によっては随分意識されてしまいます。もう警戒といっていい位の時もあります。
当然といえば当然で、観察される立場からすると、仕事の最中に突然現れた知らない人間がずっと張り付いて、じっとこっちを見ながらなにやらメモを頻繁にとっている・・・。
「行動観察」ならぬ「行動監視」に見えているかもしれません。
事前に主旨説明を受けていても、なかなか気分のいいものではありませんよね。
観察する側としても、意識されてしまってマニュアル通りの行動しかしてもらえない様では「行動観察」の効果半減、良い「気付き」が発掘できません。
対象とのラポール(信頼関係)形成は、インタビューやカウンセリング等でも基本的な重要事項として認識されているのですが、行動観察でも同じかそれ以上に重要かと考えています。
現場によってはコミュニケーションを取れる機会が限られており、ミラリング(*2)やオウム返し(*3)なども展開しにくい状況、というのが多々あります。
そこで現場の皆さんと同じ格好で、同じ所でめしを食べ、少しでも早く馴染んで普段どおりの皆さんを出していただくように努力する訳です。
私の場合は観察時間の前半はこの「馴染む」作業に専念します。
メモや質問はちょっと優先順位を下げて後回し、時間が有ればできるだけ世間話をします。
喫煙所や自販機コーナー近辺もあえてうろついてみます。
自分のプライベート等も相手の様子を見ながら話してみたり。共感を得られるかもしれません。
リラックスしてもらえれば、随分調査がはかどります。
過去の失敗談や、モチベーションに関する発言等が引き出せれば合格!ではないでしょうか。
ここをクリアできれば、充実した、お互い楽しい観察ができると思います。
とはいえ、気が抜けるのは休憩の時くらいです。
対象者さんが接する第三者への配慮や、移動などの物理的制約から、ビデオ撮影など出来ない場合が多いですから、リアル観察の一本勝負、ボーっとしてる訳にはいきません。
仲良くなってもそこは異国の地、仕事内容、地理、専門用語など不慣れな事ばかり、他の方のお仕事の邪魔にならないようにもせねばなりません。気疲れします。
さらに体力的にも結構キツい現場も多いんです。
夏の炎天下に屋上で何時間も作業するお仕事もあれば、
冬の寒いときに1日何百件もお宅を訪問するお仕事もあったり。
狭い厨房の機器の隙間に挟まってじっと観察することもあります。
体力的にも、精神的にもヘトヘトになります。
今まで「楽でいいなこの仕事」と思った対象者さんはいません。
いや本当に皆様お疲れ様でございます。
観察対象への感情移入など、調査中にはしてはいけないのですが、
ふと「大変だからちょっと良い様に書いてあげたい」と思ってしまいます。
「ダメダメ」
一瞬せめぎあいます。
ここで情に負けては観察員失格です。
良いことも悪いことも、ありのままに客観的事実を書き続けます。
はじめてそれを見た子供のように、です。
そこから生まれる改善案が、いつかあの対象者さんとその仲間の幸せに繋がれば、と願い事実を書き続けます。
時には少なからず仲良くなって、対象者さんに仕事あがりに飲みに誘われたりもします。
これはこれでラポール形成、と言う面では成功ともいえるのでしょうが、
残念ながらほとんどの場合、私はくたびれてしまって行けないのです。
ごめんなさい、皆さん。
※写真は全てイメージです。行動観察調査とは関係ありません。
以上
(*1)ラポール
心理学用語。対象者との暖かい親和的な信頼のおける関係。
(*2)ミラーリング
コミュニケーション手法の一つ。相手の動作に対して、まるで鏡のように自分の動作も合わせる方法のこと。
相手に親近感や安心感を与える効果があると言われる。
(*3)オウム返し
コミュニケーション手法の一つ。相手の言葉を繰り返すことによって、相手に親近感や安心感を与える効果があると言われる。
行動観察研究所 事務局 石川淳二

- « 研究員コラム 第3回
- 研究員コラム 第5回 »











